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司法試験(労働法) written by 76期弁護士 佐藤 和樹

司法試験(労働法) written by 76期弁護士 佐藤 和樹

1 はじめに

司法試験・予備試験の労働法の勉強方法について、悩まれている方は多いと思います。選択科目の1つである労働法に興味はあるものの、どのような問題が出題され、そもそも出題範囲はどこからなのか等がわからないため、どうしも敬遠してしまっている方もいらっしゃるでしょう。そこで、このコラムでは、司法試験・予備試験の労働法の勉強方法について、具体的に掘り下げてご説明します。

このコラムを読めば、労働法の勉強方法がわかりますので、ぜひご一読ください。

 

2 労働法とは?特徴は?

司法試験における労働法は、他の司法試験選択科目の中でも最も受験者数が多い試験科目です。そのため、試験対策という観点からすると多くの基本書や参考書などが出版されており、勉強素材が非常に充実している科目です。

また、労働法はその名の通り、労働問題に関連する法律です。労働者の立場や使用者の立場、時には労働組合の立場に立ち、会社といった組織の中で生じる問題を調整するのが労働法です。そのため、私たちの日常生活とも密接に関連する法律であるだけでなく、実務に出た時も必ずといっていいほど、労働法が問題となる場面に出会います。

このように労働法は、受験者数が最も多いため、勉強素材が充実している科目であること、そして労働問題の調整を図るための法律であるため、身近に感じやすいことが労働法の特徴です。

 

3 労働法を選ぶメリットは?

ここでは複数ある司法試験選択科目の中から労働法を選択することのメリットについてご紹介します。

結論からいうと、司法試験選択科目で労働法を選択することはメリットが大きいです。ですので、ぜひ選択科目で迷われている方は労働法を選択することをお勧めします。

 

1 労働法は例年人気№1!教材も豊富

まず、労働法は例年人気が高く、受験者数も他の科目と比較して最も多い傾向にあります。そのため、労働法に関連する基本書や演習書も同様に数多く出版され、その内容も日々厳選されています。このように、受験者数が最も多いからこそ、労働法を学習するための教材も非常に豊富で、基本書や問題集に困ることは基本的にはありません。

 

2 実務に役立ちやすい

さらに、労働法は実務に役立ちやすい特徴があります。

実務に出ると、労働者や使用者の方々から相談を受けることも多くあり、その際、労働問題についても相談を受けることがあります。また、当初は労働問題ではない相談をしていたものの、労働問題に発展することも多々あります。

このように、労働問題は社会という中で生きるうえで、切っても切り離すことのできない問題です。だからこそ、実務に出てからも労働問題はいかなる場面においても、問題となり得る蓋然性を含んでいます。

実務に出てから勉強することもできますが、事前に労働法について学習を進めておくことは、実務に出てからよりスムーズに労働問題に取り組むきっかけとなります。

 

3 暗記すれば高得点が取れる

労働法の科目特性として、条文自体の文言が非常に抽象的であるため、条文それだけを読んだとしても実質的な内容を理解することはできません。条文の解釈や判例の規範が重要になります。

その分、条文の解釈や判例の規範を一度暗記することができれば、安定した得点を確保することができるだけでなく、高得点も狙うことができる科目です。

 

4 身近な法律であり、勉強に取り組みやすい

さらに、労働法は私たちの日常生活において非常に身近な問題を取り扱う分野ですので何が問題となっているのか、事実関係を把握しやすい科目です。

ですので労働法は他の科目と比較しても、非常に勉強に取り組みやすい科目であるといえます。

 

4 労働法の出題範囲、問題形式、配点

1 労働法の出題範囲

労働法の出題範囲は、大きく分類すると個別的労働関係法と集団的労働関係法の2つに分類されます。

個別的労働関係法とは、労働基準法・労働契約法などといった労働者個人に着目して制定された法律関係をいいます。他方で、集団的労働関係法は、労働組合法や労働関係調整法などといったように、(労働者個人ではなく)集団的な労働関係に着目して制定された法律関係をいいます。

司法試験の労働法の問題では、例年概ね個別的労働関係法と集団的労働関係法のいずれもが出題される傾向にあります。

 

2 労働法の問題形式

労働法の問題形式は、ここ数年は比較的長文の事例問題をもとに、設問1と設問2が出題される傾向にあります。そして、設問1では個別的労働関係法が、設問2では集団的労働関係法が出題される傾向にあります。

他の選択科目と異なり、労働法は設問ごとに異なる事例が設けられているわけではなく、1つの比較的長文の事例をもとに設問が2つ設けられているという特徴があります。

 

3 労働法の配点

では、労働法の配点についてご紹介します。

法務省が公表している問題文上、各設問の配点については記載されていないため、それぞれの設問にどれくらいの配点がなされているのかはわかりません。

100点満点であり、設問が2つ設けられていることからすると、一般的には各設問50点の配点が割り振られていると考えるのが通常です(もっとも、法務省が正式に公表をしていない以上、配点については確定的なことはわかりません)。

 

5 労働法の勉強法

ここでは、労働法の勉強法について詳しくご紹介します。

1 判例百選の学習は必須です

労働法の学習をするうえで、判例百選の学習は必須です。労働法の特徴は条文が抽象的に記載されているため、条文の趣旨や規範は判例による蓄積によって構築されているといっても過言ではありません。

そして、司法試験受験生が抑えるべき判例は、少なくとも判例百選に掲載されている判例すべてです。そもそも判例の規範を知らなければ、問題に回答することができないことにもなりかねません。ですでので、労働法の学習はまずもって判例百選の学習をベースに置きましょう。

そのうえで、単に判例百選を読み込めばよい、というわけでもありません。判例百選を学習するうえで大切なことは、判例の規範(理由付けも含む)だけでなく、判例になった事案の内容も正確に読み込み理解することです。

多くの受験生は、判例学習というと判例の規範ばかり覚え、もとになっている事案内容については理解していない(またはそもそも読み飛ばしている)方が散見されます。ですが、そのような学習では効果が半減してしまいます。

判例のもとになった事案内容を理解することは、あてはめ力や司法試験の問題文から事実を引き抜き、論点となる事情を拾う力を養うことができます。判例の事案から、当事者がどのような主張をしているのか、なぜ問題となったのかといった生の事実を分析することが大切です。そのような生の事実を理解したうえではじめて、当該生の事実を法的にどのように構成し、どのような法的主張をしているのかという分析をすべきです。

このような思考は、決して受験生特有の思考方法ではありません。実務に出たときも、当然上記思考を辿りますし、司法試験の問題を特にあたっても司法試験の問題文という生の事実から、当事者がどのような主張をしているのか、何について主張が対立しているのかを分析し、そこから法律構成に落とし込むことになります。

上記思考を身に付けるには、判例百選の学習が最適です。判例百選には、生の事実だけでなく、当該生の事実を当事者がどのように法律構成しているのか、そして裁判所がどのように判断しているのかがすべて記載されています。

だからこそ、判例百選の学習は重要であり、特に労働法では判例百選の学習は必須といえるでしょう。

 

2 過去問演習を大切に

さて、そのうえで判例百選の他に、過去問演習も非常に重要です。

労働法の過去問は数多く蓄積されており、年度によっては類似した論点が出題されている傾向にあります。また、過去問を分析することでどのような出題で、どのようなことが問われているのか、重要となる事実がどのようにして問題文にちりばめられているのかなどを知ることができます。

このことから、(判例百選の学習の他に)過去問演習も大切であるといえます。

 

3 個別的労働関係法・集団的労働関係のいずれも満遍なく

また、司法試験の労働法では個別的労働関係法と集団的労働関係法のいずれもが出題される傾向にあります(近年、この傾向に変化はありませんので今後も両者が出題されることに変わりないでしょう)。

基本書の立て付けから、どうしても個別的労働関係法の学習がメインとなり、集団的労働関係法の学習が手薄になってしまう方も見受けられます。そうならないためにも、意識的に個別的労働関係法だけでなく、集団的労働関係も学習する意識を持つことが大切です。

 

4 あてはめを意識した学習を

最後に、あてはめを意識した学習をしましょう。

判例百選の学習方法のところでも述べましたが、いくら規範を覚えたとしてもあてはめができなければ意味がありません。また、あてはめは単に問題文の事実を規範にあてはめる、のではなく、あてはめる事実の中にも重要なる事実かそうでない事実かなどの区別があります。

ですので、判例学習や過去問学習をする際には、あてはめを意識した学習をすることが大切です。

 

6 まとめ

以上、司法試験の労働法についての勉強方法や試験内容、出題傾向などについて詳しくご紹介してきました。

労働法は実務で活用することが多い科目ですし、日常生活とも非常に密接に関連している身近な法律です。

そのため、司法試験受験の段階から知識を身に付け、正しい理解のもと学習をしておけば、実務に出た際にも非常に役に立つ科目です。また、判例や過去問、演習書、基本書などの勉強素材も充実しているため、学習しやすい科目の1つです。

ぜひ本コラムを参照して頂き、司法試験の選択科目である労働法の学習を効率よく進めて頂き、合格を勝ち取って頂きたいと思います。

 

 

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